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将棋侍の初夢

ビートルズがスピーカーから飛び出している。

薄暗い小さなスペースは、5人が肩を詰めてすわれば満杯である。
バクダンを飲んでいる飛び職の若者や、座禅の様に身動きさえしない学生が目を閉じている。

1970年の新しい年が明けたばかりの古びた店は、時の狭間に埋もれている様な不思議な空間で、居心地がいい。


京の都、洛北高野の裏通りにひっそりある、《ジュジュ》というロックがかかるスナックにいた。

侍姿の拙者を不思議がる様子も無い。

突然スピーカーが沈黙して、長髪ヒッピー姿のマスターが、創ったばかりの曲をギターを弾きながら唄い始めた…

ー人間なんてラララ ララ
ララー

一条戻り橋のたもとに行き《時の蔵》を移動する事が多くなったが、どの時代にタイムスリップするかは、いっこうにわからない。

ふと気付くと、端に座っている少女が拙者を見つめている。はて、何処かで会った様な気がするが…

「将棋侍さんでしょ」
いつの間にか隣の席にいる
少女が話しかけてきた。

「出雲からきました。わたしに将棋を教えてください。どうしても棋士になりたいのです!」
キラキラした目が真っ直ぐ見つめている。

「どうして拙者の事を知っているのでござるか?」

「3月のライオンのモデル、豊島将之七段に聞いてきました。それで一条戻り橋に行ったのです」

少し酔いがまわったのか、
突然天井がグルグル回り始めた。

気がつくと、何時もの拙者の部屋で目が覚めた。
夢か。タイムスリップしていたのか。


ああ、里見香奈さん、大丈夫でござるよ。
遠からず奨励会の三段リーグを抜けて、晴れて女子で初めて正棋士になるのは間違いない。

将棋侍がしかと見届けてまいったゆえ。

飼い猫の座無座がいぶかしげに拙者を見ているが…

 

(2016年1月9日(土) 5:36)

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この記事を書いたコーチ

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