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「名前のないキャラ」の扱い

 小説を書いているときに直面する問題に、「名無しの登場人物」がある。
 そのシーンでかなり重要な役回りではあるけど、以後のシーンでは出てこないので名前もない、という役である。
 映画のシナリオの場合は、青年1、2、3ですむのだが、小説の場合そうはいかない。
 そこで、次のような手段をとる。例文は、またしても拙作「不死の宴 第一部」である。

例)
 北島は部屋に入って俊子を見た。ゆっくりと部屋を見回し、左手に包帯を巻いた上島が床の縄円座にあぐらをかいているのを見た。傍らに清酒「ダイヤ菊」の一升瓶が転がっている。北島を見つめたまま右手の杯を口に運びかけて動きを停めていた。
 「やっぱり、あんただったか」と北島が言った。
 「こりゃあ奇遇だね。たまたま知り合いの博徒と飲んでたら、この小娘が連れてこられてねえ」と上島。
 「海軍さんには諏訪湖ホテル接収に際してお世話になっとるのよ」と「腹巻き」が言った。拳銃を構えていた「地下足袋」も薄ら笑いを浮かべながら、「上島さま、どうしますかね、こいつ」と言って北島に向かって顎をしゃくった。
 「まずは、俺と同じ左手かな」と言って右手の杯を唇に近づけると、ちゅるという音を立ててなめるように飲んだ。
 そして、左手を掲げると、「この左手、細かく折れちゃってねえ。まだ麻痺が残っとるのよ。俺のような優秀な皇軍兵士がなかなか戦地には戻れない。残念だと思わんか。ああ?」と続けた。
 「腹巻き」は「へい、ドスの出番ですね」と言うと、腹巻きに挟んでいた白鞘の短刀を出した。鞘から抜くと、北島の前に回って顔の前に刃先かざし、電灯の光を反射させてにたにたと笑った。北島がおびえるのを期待しているようだ。
 「おい、鉄、あんまり血で汚すなよ、掃除が大変だから」と「地下足袋」が言った。


 お気づきだろうか、地の文の視点となる人物の目線で「腹巻」「地下足袋」と「あだ名」をつけて、以後その名で描写する。そうすることで、読者(と多分に作者も)の煩わしさを回避している。
 全ての人物に名前を与えてしまうと、今後の物語に重要な人物?というミスリードも与えてしまう。
 読みやすくてストーリーを追いやすく、その物語のダイナミズムを堪能させる作品の場合、読者の「?」は読者が本を置いてしまうきっかけにもなりかねない。

 また「あだ名」を与えることで、そのキャラのイメージを直球で伝えることもできる。そのもっとも良い例が、漱石「坊ちゃん」の「赤シャツ」と「野だいこ」だろうか。

 執筆上の小技である。

 

(2018年12月13日(木) 17:43)

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