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体験をもとにした小説を書く(2)

 実際の体験を基に小説を書くと言っても、私には特に変わった体験などないし、と思う方も多かろう。だが、別に変わった体験でなくてもいいのだ。
 一番簡単なのは初めての体験だろう。ただ、勘違いしてはいけないのは、中学に入ったとか高校生になったとかの節目ではなく、「初めての気持ち」である。
 初めて「好きになった」、初めて「おびえた」、初めて「悲しかった」、初めて「うれしかった」など。

 例として、「初めて仕事で大きな失敗をした体験」で考えてみよう。
 普通の方は、いきなり自分の体験から語り出して終わってしまう。だが小説にするにはそれなりの工夫が必要だ。

 初めて部下を持った私。その部下が仕事で大きな失敗をしでかした。その時、脳裏によみがえったのは、自分が初めて失敗をしたとき、鮮やかにリカバリーをしてくれた先輩社員のAさんだった。
 こうすることで、過去の体験をきわめて客観的に描くことができる。これを上司目線で描くか部下目線で描くかは、作者の年齢で決めればいい。

 物語の締めは、部下の「ありがとうございました」と言いながらも気落ちした表情に、「あの時、僕を助けてくれたA先輩への恩返しができた」と上司に言わせて、若い部下が「俺もいつかは部下を救える上司になろう」という気持ちにさせる、なんてのが典型かな。
 助け合う気持ちを継承していく職場文化も描けて、面白いビジネスストーリーになるかも知れない。

 他にも、子供が中学に入ったきっかけに、初めて父親が嫌いになった自分の中学生時代を重ねて、当時の父親の気持ちを知る、とか。

 こういった作品のよい例に、重松清さんの作品「きよしこ」がある。ぜひお読みいただきたい。

 

(2015年8月14日(金) 15:34)

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