サイタ趣味の習い事言葉/文章講座小説愛知 小説指南 スクールブログ そのイメージは...

そのイメージは、ちゃんと読者に伝わっているか

 自分の若い頃を振り返って思い出すのは、意図せずに出てしまう「あいまいな表現」である。

例 場末のマンション

 この場末のマンション、自分では歓楽街に隣接して、高級そうな外観とは裏腹に、風俗嬢やヤクザなどが出入りする荒みきった賃貸マンションのつもりで書いているのだが、作品内では、「場末のマンション」の一言ですませてしまっている。
 これでは通じない。だめだよ若い頃の俺。

 レッスンで拝見した作品にも同様の例があった。

例 魔物

 その魔物は、中世ヨーロッパ風のヒエロニムス・ボッシュの絵(最近だと三浦健太郎さんの「ベルセルク」系ね)に出てくるようなものなのか?それとも北欧神話、ギリシア・ローマ神話、ケルト、近代アメリカのラブクラフト的なもの、生物としての法則に合致する生物的なものなのか、生物と非生物とが混在するキメラのような化け物(諸星大二郎風とでもいうか)なのか。といった読者の思いをよそに、作品内では「魔物」の一言ですませている。これでは通じない。

 読者のイメージと作者のイメージは、一致しないことが多い。
 曖昧なまますませてよいものもある。主人公の顔立ちなどは、読者の想像にお任せしてしまって全く問題がない。

 また、読者対象によってすでに共犯的に共有されているイメージもある。
 ライトノベルの世界やオタク系の界隈では、「妹」という単語に、「年下の女の兄妹」という意味意外にも、「小憎らしいけど可愛くて、男の子を翻弄するわがままなお姫様」といったイメージがあるが、そんなことを知っている高齢者はよほどの変人だろう(俺のことかよ、笑)。

 ライトノベルが閉鎖的で内輪的に語られるのはそのためだ。それはなにもラノベに限った話ではない。
 「なんだか『俺いも』みたいな話だね」というセリフがラノベファンにしか通じないように、「まるで安珍と清姫だね」というセリフも年寄りにしか通じない。
 読者にイメージが伝わるよう、このイメージの共有具合も作家のさじ加減が要求される。

 ただ、最前、例にあげた世代やフォーラムによる共有イメージや言語をうまく使うと、すごくリアルな人間関係や会話を作品内に登場させることができる。これは普段から、作家的な目で世間を観察することが重要だろうね。

 

(2015年6月2日(火) 11:21)

前の記事

次の記事

この記事を書いたコーチ

ブログ10万人訪問、著書の受賞歴あり!小説作りの楽しさを伝授します

新着記事

 今回は、自分では意識していなかったが他者から指摘されて気づいたテクニックについて。 例文はまたしても拙著「不死の宴」から。  空は青く白んでいるが、昇ったはずの太陽はまだ山の向こうだった。諏訪神社上社の前宮は、まだ山の陰に入っていた。  守矢みどりは分室での夜勤を終え、帰宅前の前...

 今回も拙著「不死の宴・第一部・終戦編」の一部を引用して、作家が文章を書くときに考えていることを解説する。  まず最初に初稿の段階の文章をお読みいただきたい。舞台は昭和十八年の九月だ。 以下  上諏訪町の駅に列車が到着したのは午後一時を過ぎた頃だった。朝八時に新宿を出てから四時間...

 小説の語りでは一人称と三人称がある。これに関しては「1人称、3人称、神の視点」で説明した。基本的に一章、一段落などの間でこの人称が混在することはないし、混在すると物語が支離滅裂になって理解不能になる。  では次の例文を読んでみよう。拙著「不死の宴・第一部・終戦編」の第九章の一部である。終戦...

高杉さんは、当「小説指南」でご縁があった生徒さん。 今回、AmazonのKDP(キンドル・ダイレクト・バブリッシング)で小説をリリースされました。 性同一性障害の妹にハラハラする兄貴のお話です。 軽妙な語りでライトノベル風なスタイルだけど、恋をするだけでも大変な彼女と彼らの気持ちが見...

私事で申し訳ありませんが、コーチ・栗林が新しい電子書籍を出しましたのでご案内。 8/16(太平洋標準時)の間は無料でダウンロードできますので、普段偉そうに語っている栗林の作品がどの程度のモノか見極めてやる、って方はぜひダウンロードください。 AmazonのKindleストアです。 8/1...

ブログ記事 ページ先頭へ