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物語の発想と膨らませ方(最終回)

 ドローン運用部隊の物語の構想を練るという形で続けてきたシリーズ最終回である。この物語の発想のきっかけは、テレビのニュースで知ったアメリカ軍のドローン(無人機)による敵兵殺傷に驚いたことである。具体的にはデスクワークとして人を殺せることに驚いたわけで、さらにつっこんで身体に障害があっても兵隊になれる、させられるという可能性に気づいて、障害者の社会参加という、美しい題目が、同時に戦争という犯罪をも支えうるという皮肉が、極めて現代的だと感じたことである。

 この物語では、この「美しい題目と醜い現実」の対比を、「絶望する若者に最後まで寄り添う娘の愛情と、憎しみの連鎖を克服できない人間に対する絶望感」の対比によって語っていくのだが、あくまでストーリーの発想は、「皮肉な物語構成」を思いついたところである。最初から、「憎しみの連鎖を止められない人間に警鐘を鳴らすため」に物語を発想したのではない。
 作家の中には、これを勘違いしてしまう方も多い。今回の場合だと、対外的に「憎しみの連鎖を止められない人間に警鐘を鳴らすためにこの物語を書きました」と言ってしまうのだ。その方が評論家は喜ぶからである。

 だが、これとは違う物語の発想方法もある。今、私が構想している作品だが、これは52歳の時に「うつ」で会社を辞めた私の心境の劇的な変化を作品で書きたいというのがきっかけである。
 「うつが悪化して、会社を辞めざるを得なかった」という失意と絶望と劣等感でいっぱいだった私が、周囲の環境も収入状態も家族の関係も、何一つ変わっていないにも関わらず、「うつのおかげで、会社を辞めるきっかけができた」と考えるようになったこと。その後に出会った様々な人達を見て、この人たちに出会えたから、会社辞めて正解だった、と思えるようになったこと。この心境の変化のおもしろさを、なんとか小説作品で伝えられないかと考えている。

 このように、自分の体験から作品を作る場合は、よいお酒を造るように、その発想を寝かせ熟成させる時間が必要になる。特に、つらい体験や大失敗のようなことほどそうだ。周囲に対する「恨み」や、「恥ずかしさ、照れくささ」など、個人的な邪念を吹っ切る必要がある。作家は作品づくりのためには冷静で、ある意味酷薄であるが、それは社会や周囲だけでなく、自分自身に対しても同様である。

 物語を発想する、二つの場合。前者はエンターテイメント、後者は文学と言えばいいのかもしれない。だが、どちらにも共通するのは、リアルな人間の心を描くことで作品の良否が決まるということである。

 

(2015年4月3日(金) 18:55)

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