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物語の発想と膨らませ方(4)

 「イカロスの翼(仮)」の構想を練る四回目である。前回は主人公タカシのキャラクター像を練り込んだ。本当は、物語に登場するかどうかはさておき、家族構成や両親の仲がよかったか悪かったかなど彼の周辺まで考えるのだが、今回は、ストーリーに直結する他のキャラクターを練り込むことにする。

 まず、タカシと同じドローン部隊に属するパイロット・ケンジだ。彼は元々空軍のパイロットで、任務中の戦傷で車いすを余儀なくされ、除隊したが技量を買われてドローンのパイロットになった。生粋の軍人キャラである。ただ、彼は生身をさらして戦闘に参加していただけに、安全なところで操縦される無人機で敵を殺傷することに強い嫌悪感と罪悪感を感じる。そんな彼が軍務を続けるには、それなりの動機が必要だ。そこで、彼が入隊したのは妻を敵国のテロで殺されたから、そして再び軍に戻って無人機のパイロットをするのは、残された一人娘を養育するためやむを得ず、という理由を付けた。

 もう一人の同僚は、アキラ。彼もまた技量を買われてスカウトされるが、それはゲームからである。ケンジのように罪悪感も嫌悪感も感じることはない。ゲームの刺激におぼれるジャンキーである。体は正常でも、心と感覚を任務でぼろぼろにされた、彼もまた戦争の犠牲者なのだ。

 そして、タカシを見守るマリアというキャラクターがいる。
  彼女は障害者を支援するボランティアとしてタカシに接する。しかし、長い年月をかけてもできなかった、タカシが自信を持って社会へ出てアイデンティティーを確立する、という事を、自分たちの支援ではなく軍隊の任務が可能にしたということに打ちのめされてしまう。
しかし、軍隊の広告塔として英雄になったタカシが、一転、心を病んで絶望したときに、唯一彼を救うのがこのマリアという女性なのだ。


 年上のケンジは、同僚のアキラ、そして主人公のタカシらが、任務を通して変わっていく様を冷徹に観察している。彼の視線が読者の視線だ。
 ケンジは、憎しみの連鎖で終わり無き戦いを続ける自分たち人類に半ば絶望を感じ始めている。しかし、ぼろぼろになったタカシを最後に救ったマリアの無私の愛情を目撃し心に思う。
  「人間の心にマリアのような気持ちがある限り、人類は必ず自分たちの愚かさを克服するに違いない。そう信じて、俺は絶望はしない。ぜったい絶望なんかしてやるものか」と。

 この物語を構想しながら、作者は過去の戦争をテーマにした多くの作品を想起するのだが、それら作品の多くが、憎しみの連鎖から戦争をやめられない人類の愚かさを嘆いたり憤慨したり呪ったりするものである。そこで、作者はそれをさらに一歩進めて、そんな人類に絶望しない、あきらめない、というところまで歩を進めることにした(この、絶望を拒否する勇気は、「シン・レッド・ライン」という太平洋戦争を題材にしたアメリカ映画で唯一見たことがある、これは傑作映画ですのでぜひ見てくださいね)。
  私は、このマリアというキャラクターに、その人間の心に潜む本当に「善」なものを仮託したわけである。

次回は、これらの設定をふまえて、思いついたエピソードを列挙(カード化)し、それをつないでストーリーラインを作る作業に入ろう。お楽しみに。

 

(2015年3月3日(火) 15:48)

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