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物語の発想と膨らませ方(3)

 二回で終わるつもりだったけど、意外に好評なのでシリーズ化する事にした。ちなみに、この手法は、マンガ編集家の竹熊健太郎さんが相原コージさんと組んだ作品「サルでも描けるマンガ教室」(略してサルマン)で「とんち番長」という架空の連載マンガを設定して語った方法と同じだなと気づいた。
 さて、まずは、このドローン部隊の話、仮にタイトルを付けようと思う。もともとタイトルには、「~の翼」とか「翼の~」にするつもりだった。「翼」には、大空を羽ばたく「自由」「希望」「夢」「未来」のようなイメージがあり、「戦争」という「不自由」「絶望」「絶たれた夢や未来」などをイメージさせるネガティブな単語と組み合わせていろいろな寓意を込められそうに感じていたからだ。
 そこで、この作品には仮に「イカロスの翼」とタイトルを付けることにする。イカロスとはギリシャ神話の人物で、父親の大工ダイダロスとともに鳥の羽を蝋で固めた翼を作り空を飛ぶ。父親の警告を無視して有頂天になり高く飛びすぎたイカロスは太陽の熱で蝋が溶け海に落ちて死ぬ。主人公の物語を暗示させるわけだ。
 では、登場人物をもっと掘り下げていこう。まずは、登場人物の一覧だ。構想のこのあたりで、作家は人物一覧表や設定集などを作り始める。


ドローン部隊の操縦者
タカシ・子供の頃の事故で下半身が麻痺して車いす生活。
ケンジ・退役軍人の元パイロット。撃墜されて障害者になった。
アキラ・ゲームプレイヤー上がりの操縦者。ゲームジャンキー。

障害者支援ボランティア
マリア・タカシを支援してきた女性で、密かにタカシに思いを寄せているが、美人ではない(←ここ重要)。


 今回は、タカシの人物を掘り下げて考えてみる。ここを微細に決め込むとそれだけで物語の中に必要なエピソードなどが決まってくる。

 タカシは幼い頃に事故で下半身が麻痺することになるのだが、これを生まれつきではなく事故にするのには理由がある。私は親の不注意で事故に遭ったことにしようと考えた。親は罪悪感からタカシに対する厳しい教育ができずタカシの性格にそれが反映されるのだ。
 タカシは、学校生活や恋愛など、思いどおりにならないことを、自分の障害のせいだと思って、親や世間を恨む。
 この、「思いどおりにならないことを、・・・のせいだと思って、親や世間を恨む」というのは、誰の心にもある感情で、それだけに読者の共感を得やすいし感情移入もしやすい。物語では、わかりやすくそれを障害にしてあるだけだ。
 このタカシの性格を物語るエピソードは作品内で不可欠だろう。日常の描写の中で、断片的な回想という形で出すか、章を立てて物語るかは後々考えるとして、幼年時代、少年時代、思春期などにタカシがどんな体験をしてどんな気持ちを抱いたかを考えてまとめることにしよう。
 すでに彼を支援するマリアという女性との出会いはあるが、彼女に対して恋愛感情はない。マリアは心優しい少女なのだが、若い男性から恋愛対象として見られるような魅力には乏しい。ここが重要で、この物語の落とし前の一つとして、ラストでタカシがマリアの本当の優しさに気づくということも作家は念頭に置いているわけなのだ。
 タカシは、フライトシミュレーターゲームの才能でドローンパイロットになるのだが、そこでの出会いや甘えを許さぬ訓練などで次第に人間として成長していく。戦争のための訓練でも人間性が磨かれることはある。これも大きな皮肉である。
 タカシは非凡な才能を発揮する。本来下半身の運動の為の脳の運動野をすべてドローンの操作に振り向けられるからだ。軍の幹部は、優秀な戦果を挙げる可能性のある障害者を積極的に軍に登用することを決める。タカシは軍の広告塔となりマスコミで一躍英雄になる。富も名誉も手に入れる。
 有名なアイドルと浮き名を流すタカシ。だが本当の愛は得られない。
 「僕に障害があるからなのか?」と問いつめるタカシに、「あなたのそういう考え方がいやなの」と告げられる。そして、追い打ちをかけるように、テレビの報道で、敵国もドローン部隊を編成したことを知る。そのパイロットはやはり障害者。そのパイロットが障害者になった戦いこそ、タカシが英雄になった戦いだったのだ。ここで、今風に「憎悪の連鎖が終わりなき戦いを生む」という視点もクリア。
 絶望して心を病んだタカシは、墜ちた英雄(おお、ここでイカロスと一致した)として世間から忘れ去られる。そんな彼を救ってくれたものこそマリアの変わらぬ愛情だった。

 ここで、読者の皆さんはこのBLOGでかつて書いた、「主人公に業を背負わせ、ラストでそれに落とし前をつける」(※1)という言葉を思い出していただきたい。登場人物を掘り下げるということは、まさに「背負わせる業と、その落とし前」を考えることなのである。今回のように複数の登場人物のエピソードが絡み合う構成(※2)では、それぞれの人物に「業と落とし前」を用意してやりたい。次回は、ほかの人物たちを考えていこう。お楽しみに。
 ※1 脚本家・笠原和夫氏の言葉だったと思うが、記憶あいまいである。
 ※2 作者の心の中では、すでに、この作品は「神視点の三人称」で書くことが決まっている。

 

(2015年2月21日(土) 22:23)

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