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アクションシーンの描写について考えた

 私は少林寺拳法を修行した経験があるので、映画やドラマといった映像作品でもアクションが大好きである。ブルース・リーによって世界の映画シーンでアクションが革命的に変わっていくのをリアルタイムで見てきただけに、小説という作品世界の中でアクション、特に格闘を描写することに関しては、研究と工夫をしてきた。
 一般の人は、映画やゲームなどの映像による格闘を見てしまうと、言葉による表現に限界を感じるかもしれない。だが実は、言葉による表現でしか伝わらないものがある。


 喉に流れ込む血をごくりと飲み込むと、鼻の奥から、ぷんと鉄の匂いがする。

 これは、私の「自転車の夏」という作品から引用したが、鼻に正拳突きを食らって鼻血が出たときの感覚である。
 ほかにも同様の感覚で言えば、顎の横の三日月という急所に下から掌底で突きを食らった時(アッパーカットですね)、痛みは殴られた顎ではなく、頭蓋骨の対角線上の反対側、こめかみより5センチほど上の部分に感じる。ここを殴られたような痛みがあり、これは顎から入った衝撃波が「抜ける」ポイントなのである。
 また、水月(すいげつ、みぞおちのこと)という急所を殴った感覚は、相手が息を吸う絶妙のタイミングで決まると、手首までめり込んだような感覚がある。
 といった格闘者の「感覚」の描写は映像では無理だ。まず、体験したことがなければ思いつきすらしない。

 このように、言語側からも映像側からも不得手な部分があるのだ。そして、それを乗り越えて表現するのがまた楽しいのだ。

 1970年代の平井和正氏のウルフガイシリーズは、1980年代に湧きおこる伝奇バイオレンスアクションの書き手たちの教科書ともいえるべき作品だ。文字による表現だが、今読んでも目の前にありありとシーンが浮かんでくる。また、大藪春彦氏の「銃」や「車」の描写のリアルさは、やはり実際に体験習熟した者にしか書けないものがある。

 私自身も、作品を読んだ空手の有段者の方から、「この描写は実際にやった人しか知らないもので、本物だと思いました」と言われ、作者冥利に尽きると思ったことがある。

 表現の工夫は面白い。

 

(2014年9月25日(木) 23:10)

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