サイタ趣味の習い事言葉/文章講座小説愛知 小説指南 スクールブログ 描写で語れ

描写で語れ

先日、テレビのインタビューで松任谷由美さんが示唆に富んだ話をしていたので、その話題。

ユーミンは、恋の歌を作る際の取材(みんなから恋話を聞くこと)で、恋の現場のディテールを聞き込むと言っていた。何故なら、「私は歌の中で描写するんです」とのこと。そこで私は、はっと気づいたわけだ。

 実は、先日25歳になる長女が「何で、80年代や90年代のJ-POPってあんなにいい歌が多いんだろう」と言っていた。私も、最近の日本の歌って、ぴんとこないよな、年をとったせいだろうか、特にJーRAPなんて何がいいのかさっぱりだ、と感じていたのだが、このユーミンの「描写するんです」の一言で、一気にそのあたりの謎が解けた。

 これは以前、このブログの「描写と説明」でもふれた、シナリオ作法での「描写で語れ」ということにほかならない。
 小説で言うならば、「心象風景の描写」である。人物の心を通した情景の描写で、人物の心を語るわけだ。その時の気持ちによって、雨は「冷たく無慈悲」にもなれば、「優しく悲しみを癒してくれたり」もするわけだ。

 ひるがえって昨今の流行歌はどうだろうか、悲しいときには「悲しい」と、落ち込んだ友人には「がんばれよ」と、好きな相手には「愛している」と直接叫びまくっているわけだ。「叫び」という表現は、ここぞという時に使うからこそインパクトのある表現である。

 ユーミンは、分かれた恋人を回想する寂寥感と懐かしさを、「寂しい」と言葉にせず、そのかわりに、窓にかざしたグラス越しに「ソーダ水の中を貨物船が通る」と描写するのだ。
 中島みゆきは、悲しむ友人に、「おまえを守る!」と叫ぶかわりに、心の中で「君が涙の時には、僕はポプラの枝になる」と決意するのだ。

 小説を書こうと志す人は、このような表現に敏感になってほしい。

 

(2014年9月15日(月) 14:30)

前の記事

次の記事

この記事を書いたコーチ

ブログ10万人訪問、著書の受賞歴あり!小説作りの楽しさを伝授します

新着記事

 今回は、自分では意識していなかったが他者から指摘されて気づいたテクニックについて。 例文はまたしても拙著「不死の宴」から。  空は青く白んでいるが、昇ったはずの太陽はまだ山の向こうだった。諏訪神社上社の前宮は、まだ山の陰に入っていた。  守矢みどりは分室での夜勤を終え、帰宅前の前...

 今回も拙著「不死の宴・第一部・終戦編」の一部を引用して、作家が文章を書くときに考えていることを解説する。  まず最初に初稿の段階の文章をお読みいただきたい。舞台は昭和十八年の九月だ。 以下  上諏訪町の駅に列車が到着したのは午後一時を過ぎた頃だった。朝八時に新宿を出てから四時間...

 小説の語りでは一人称と三人称がある。これに関しては「1人称、3人称、神の視点」で説明した。基本的に一章、一段落などの間でこの人称が混在することはないし、混在すると物語が支離滅裂になって理解不能になる。  では次の例文を読んでみよう。拙著「不死の宴・第一部・終戦編」の第九章の一部である。終戦...

高杉さんは、当「小説指南」でご縁があった生徒さん。 今回、AmazonのKDP(キンドル・ダイレクト・バブリッシング)で小説をリリースされました。 性同一性障害の妹にハラハラする兄貴のお話です。 軽妙な語りでライトノベル風なスタイルだけど、恋をするだけでも大変な彼女と彼らの気持ちが見...

私事で申し訳ありませんが、コーチ・栗林が新しい電子書籍を出しましたのでご案内。 8/16(太平洋標準時)の間は無料でダウンロードできますので、普段偉そうに語っている栗林の作品がどの程度のモノか見極めてやる、って方はぜひダウンロードください。 AmazonのKindleストアです。 8/1...

ブログ記事 ページ先頭へ