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作品の普遍性とは

 小説作品の普遍性とはどういうことなのだろうか。
 私は、多くの読者に共感されることだと感じている。

 ピエール・ブールというフランス人は太平洋戦争中にインドシナで日本軍の捕虜になり捕虜収容所で苦労をした。植民地の宗主国としてインドシナ半島を支配して我が世の春を謳歌していた白人が、一段下の存在だと思っていた黄色人種に破れて虜囚にされたのである。その悔しさ、屈辱はいかばかりであったろうか。日本は戦後、捕虜の扱いで100人以上の戦犯を出したくらいだから、捕虜の苦労もひとしおであろう。
 彼は戦後、その体験を元に一冊の小説を書いた。普通であればフランス人を主人公にして虜囚体験を綴るのではと思われるが、彼が書いたのはSF小説でタイトルは「猿の惑星」であった。
 彼は、日本及び日本人、アジア人に対する恨みは「アジア人を猿になぞらえる」という一点(これも痛烈だが)にとどめ、あとは西洋文明と白人のおごりと衰退、また支配階級「猿」を描いて人間社会の中の階級などを批評的に描いた。

 多くの人が想像するように、フランス人を主人公に虜囚生活を描写していたら、どれほど冷静に描こうと、これは白人の「恨み節」として、多くの読者(特にアジア人)を獲得する事はできなかっただろう。
 これをSF小説に変え、「恨み」を「文明批評」に昇華させることで、この作品は「普遍性を獲得した」と思うのだ。
 ただ、ブールは死ぬまで日本を恨んでいたようで、作品と個人の思いはまた別である。

 個人の体験や感動や怒りや恨みで小説を書くことは間違いではない。ただ、いい小説にするためには、その感情を克服していることが必要だ。むしろ、小説化することによって克服ができるという側面もある。
 私自身、「うつ」を体験して10年ほど「抗うつ剤」のお世話になっていた時期があるが、それを克服できたのは、小説を書くという行為と、作家的な視点のおかげだと思っている。

 

(2014年6月28日(土) 12:23)

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