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身近なところから触れてみる民法⑤~ビットコインは「物」なのか?~

 最近コインチェックの事件で何かと話題になっているビットコイン。仮想通貨という奴ですね。流出してしまった仮想通貨について、常識的には持ち主だった人間は返してくれと言えそうなものですが、どうも現実はそんなに簡単に事が運ばないようです。法律制度が時代に追い付いていないのが浮き彫りになっているといえるでしょう。はれのひ事件の時と同様に、被害者はビットコインについて取り返せるのか、検討してみましょう。
 ただ、ここから先はまだ裁判の実務ですら固まりきっていないポイントですから、僕の私見が多分に入らざるを得ないのをご了承下さい。私見ポイントと実務で確定してるポイントは分かるように書いておきますので。

◆身近なところから触れてみる民法⑤~ビットコインは「物」?~
1.物とは?(ここは現在の実務と裁判。)
  凄く基本的なことですが、結構大事なことです。なぜなら、もっとも基本的な権利である所有権は、物、すなわち「有体物」についてのみ生じるのが原則だからです。
  もうこの時点で雲行きが怪しいかと思いますが、ビットコインというのは手で触れるような形で現実世界に存在している訳ではなく、ネット上、更にいえばハードディスク上に存在するデータに過ぎないものです。ということは、有体物ではないんですね。よって、ビットコインには所有権は観念出来ないということになります。そうなると、「私の『物』なんだからビットコインを返せ」とは主張出来ないことになるんですね。実際裁判でも、「空間の一部を占めるようなものではない」ということで「物」にはあたらないこととなり、所有権に基づいたビットコイン返還請求は認められませんでした。そしてこの判決によって、ビットコインは所有権によって盗んだ人間から取り返すことが出来ないこととなりました。
  (省略しましたが、更に難しく言うと、裁判では所有権がどんな時に生じるかっていうのを3つ述べていて、有体物であること、排他的支配性があること、非人格性があることの3つ。それらについて条件を満たさない、ということで所有権が観念出来ないとしました。今は所有権についてのお勉強ということで他の要件は割愛。)

2.どうやって帳尻を合わせる?(ここからは私見。)
  という訳で所有権、すなわち物権によっては中々救済されないというのが現状のようです。他の物権で勝負出来ることあるのかなぁ?僕の脳みそでは直ちには思い浮かびません。
  ここから先は私見になります。ではビットコインが取られちゃったらそのまま泣き寝入りしていないといけないのか?権利が何も発生していないのか?となると、そう考えるのはいかにも不自然・不合理ですよね。考えられるのは債権による請求ではないでしょうか。
  権利には大きく2つに分けて物権と債権があります。常にこの2つを同時並行的に考えるのは、法律の勉強をする上で基本であり重要なことです。ちょっと法律の問題を考えるときに頭がぐちゃぐちゃして整理が出来ないと思ったら、常に物権と債権の2つのパイプを想像する癖をつけると良いです。

3.不法行為(民法709条)、不当利得(民法703条)
  さて、ビットコインを購入した人間にとっての債権が生じ得る相手としては、ビットコインを管理していた会社と、ビットコインを不正アクセスによって盗み出した犯人です。まずは不法行為による責任を追及すること。

(民法709条)
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」

これだけだと「何じゃこりゃ」なので、いつも通りあてはめてみましょう。

「故意(自分でやろうと思ってやった)又は過失(ビットコインを管理すべき義務を怠った場合、不注意という名の過失がある)によって、他人(ビットコインを預けていた人)の権利又は法律上保護される利益を侵害(預けていた人はビットコインを自分の好きに使える権利をもっていたが、好きに使って良いはずだった何万円、何百万円というビットコインがなくなってしまった)した者(不正アクセス者と会社)は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」

こんな感じなので、多分故意を有していたであろう不正アクセス者は勿論、過失のあるであろうビットコインを管理していた会社についても債権上の責任は生じるのではないかなと思います。

あと、不当利得という法律を勉強しない限りあまり馴染みの無い債権に基づいた責任も一応生じるんじゃないかな?と思います。

(民法703条)
「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」

これは多分不正アクセス者だけに生じる責任かな?あてはめてみると…

「法律上の原因なく(勝手に盗んだだけなんだから法律上ビットコインを持つ権利がある訳がない)、他人の財産(ビットコイン)によって利益を受け(受けてますね)、その為に他人に損失を及ぼした者(及ぼしてますね)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」

どうでしょう、いけそうな気配はあるんじゃないかなと思います。

ちなみに他の責任追及手段として、ビットコインを会社に預ける時に何かしらの契約を結んでいると思うので、その契約違反の責任として民法415条による損害賠償請求なんていうのも考えられるのではないでしょうか。他には会社に対して会社法429条の責任(損害賠償責任です)を追求するなんてのもあり得るのかなぁ。ただ、今回は民法だけの話ですからここは割愛ということで。

まぁもっとも、いずれの責任を追及するにせよ不正アクセスをした人間が見つからない限りはお金は戻ってきませんし、会社に責任を追及するのが現実的だとは思いますが、果たして会社に金は残っているのか?という問題はあります。お金が無いのでは法律上の責任が生じたところで結局賠償金は受け取れませんし。

4.まとめ
  こんな感じでしょうか。ビットコインは他にも差押えが出来ないという性質があるようで、「安全な財産」、つまり借金取りに追われたらひとまず現金をビットコインにしてしまえば財産を取られないという風にも言われているようですし、法律がまだまだ追いついていない分野なのは間違いないと思います。しかし、だからといって無法地帯にし続ける訳にもいかず、現段階で存在する法律で何とかするしかありません。こんな風に色々考えるのが法律の勉強です。
  勿論間違えることだって沢山ありますが、結局は反復練習です。既に資格で飯を食べているとかならまだしも、資格取得を目指して勉強している最中に間違えることなど何も恥ずかしいことではありません。是非失敗を恐れず色々と考える癖をつけてみて下さい。

 

(2018年2月10日(土) 23:39)

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この記事を書いたコーチ

記述式形式の指導にも定評あり。知識を記憶として定着させるお手伝い

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