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身近なところから触れてみる民法④~「はれのひ」事件、着物は誰のものになる?~

  先日の成人式を経て一躍(悪い意味で)有名となってしまった「はれのひ」。買ったはずの着物が届かないまま、更にオークションに出品されているとまで報道されていましたね。現時点ではオークションに出品されている着物は「はれのひ」関係者ではないということらしいので、疑わしきは被告人の利益ということで直ちに「はれのひ」を叩いてはいけないと思いますが。
  でも、こういう事件をきっかけに民法に触れてみるのは良い勉強のきっかけになると思います。他の特別法については考慮しないことを前提に、仮に一度売ったはずのものを更に別の人にも売ってしまった場合、どんな風に結末が落ち着くのか。ちょっと考えてみましょう。初学者の方も既に法律の勉強をしてらっしゃる方も、腕試しのつもりで一緒に考えてみて下さい。疑問があったら是非僕の講座においで下さいましネ!

◆身近なところから触れてみる民法④~「はれのひ」事件、着物は誰のものになる?~
1.問題設定
  着物を売った人がAさん、着物を最初に買った人をBさん、着物を2番目に買った人をCさんとします。

①まず、AさんがBさんに着物を売りました。AさんはBさんからお金を振り込んで貰いました。このとき、AさんはBさんが着付けをする場所に着物を直接届けるため、しばらく着物を預かっておく約束をしました。

②次に、Aさんは売ったはずの着物をAさんに届けることなくCさんにも売りました。そして、Cさんからも着物の代金を振り込んで貰いました。

③その後、Aさんは2番目に買ったCさんの元に着物を引渡ました。

問題:最初に着物を買ったBさんは、2番目に買ったCさんに「その着物は私が先に買ったので私のものです。返して下さい」といって返して貰うことが出来るでしょうか?

2.鍵になる条文は192条「即時取得」
(1)状況の整理
  なるべく簡単に鍵となる条文までの道筋を説明すると、AさんとBさんの間で着物の売買が行われた時点で、何かしらの特別な条項でもつけていない限りは意思主義(民法176条)によって所有権はAさんからBさんに移ります。そして、「もうBさんのものなんだけどちょっと預かっておきますね」と言った時点で、法律上は着物がBさんに引渡されたことになります(占有改定などという難しい言い方をする)。実際にBさんの元に現物である着物が届かなくても、です。これによって、本当の持ち主はBさんになります。つまり、Aさんが着物をもっているという外観は変わらないのですが、売買契約を通じて「自分の着物をもっている」状態から「Bさんの着物を預かっている」状態に変化したのです。
  次に、Cさんはそんな感じにBさんの物となったはずの着物を、まだ手元に持っているAさんから買っています。Aさんは着物について既に所有権という権利を持っていない人であるにも関わらず、「着物屋さんが持ってる着物なんだからAさんの物なんだろう」と思って買った訳です。

(2)192条「即時取得」
  こんな時に問題を解決する条文が民法192条。即時取得と呼ばれる条文です。

「取引行為によって、平穏に、かつ公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。」

という条文です。これ、何て言ってるか分かりますか?僕は最初にこの条文を読んだ時、読んでる途中にもう条文の前半を忘れてしまいました。という訳で、問題の状況に当てはめて翻訳してみますね。

「取引行為(売買)によって、平穏に、かつ公然と動産(着物)の占有を始めた者(Cさん)は、(Aさんが着物についての権利を既に持っていないということについて)善意(知らない)であり、かつ、過失がない(知らないことについて不注意がない)ときは、即時にその動産(着物)について行使する権利を取得する。」

 先述の通り、既にAさんは着物について所有権を失っています。でも、Cさんはそのことを知りません(これを「善意」と言います)。そして、着物屋さんが着物を売ってるのを見て「これはAさんの着物だろう」と考えることが不注意か?というとそんなことはないのではないかと思います。メルカリの写真程度で他人の物であることを見破れるとも思えませんしね。なので、Aさんが着物について権利を持っていないと思うことについて不注意があるとはいえないと思います。そうなると、Cさんは192条の要件を全て満たし、着物についての権利を得ることが出来る、というのですね。

 ということは、結論としてBさんはCさんに対して着物を返せと言えなくなってしまう、ということになりますね。

※ちょっと上級者の方向けの記載
  ちなみに、問題をややこしくしない&即時取得の条文を紹介したいために占有改定で引き渡したことにしておきましたが、仮に売買契約後にまだ引渡されていない状態でCさんに更に売ったのであれば、いわゆる二重譲渡になります。そうなると、178条によって引渡の先後によって決するという例の話が出てきます。引渡がいつなのかによって178条なのか192条なのか、場面が全く異なることに要注意。まぁどちらにせよ引渡が先のCが勝ちますが。不動産だったら177条一本だからややこしくないのにね…動産を売っているはれのひの罪は深い。

3.まとめ
  この結論を皆さんはどう考えますか?Bさんが可哀想?Cさんが得し過ぎ?
  ちなみに、着物は返ってきませんが、当然BさんはAさんに対して「売買契約の約束守ってないじゃん!着物返って来なくなったじゃんかどうしてくれる!?」と、損害賠償請求(民法709条)とかをすることは出来ると思います。まぁ倒産寸前の会社に金があるのか疑問ですし、お金では買えない思い出は返って来ないので気休めかも知れませんが。

  こんな感じで自分で条文を使えたら面白いだろうなー、とちょっとでも思ったのであれば、僕と一緒にお勉強しましょう。

 

(2018年1月13日(土) 21:18)

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この記事を書いたコーチ

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