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「クリぼっち」は賢者にあらず

そろそろクリスマス。おじさんがまだ若かった80年代、ホテルやレストランはカップルの予約で早くから一杯だった。今はどうなんだろ。

彼氏、彼女がいればベストだが、いなけりゃ仲間や家族といっしょにこの日を楽しむ、というのは今も変わりないんじゃないかな。

しかし、聖夜をひとりぼっちで過ごす人もいる。「クリぼっち」というそうな。
そんな人は、吉野家で食事済ませて、コンビニでケーキ買って、それを家で「ようつべ」観ながらひとり食べる、のかどうかは知らないが、とにかく「それはよくな~い!」と哲学者カント先生がおっしゃっておられる。

先生曰く「ひとりで食事することは、哲学する者にとっては不健康である」。その心は?

元来、食事は元気を回復(Restauration)させるもの(だから食事処をレストラン"Restaurant"というのだ)。加えて、仲間といっしょに食事すれば、料理を楽しみながら会話も弾み、知的刺激も受けて、精神的にももっと元気になるものだ。

ところが、ひとりで食事するとなると、そんな刺激がないどころか鬱々と考え込みながら食べるものだから逆に元気がなくなってしまう。

つまり、哲学者のごとく賢者であろうとするならば、食事は気の合う仲間といっしょにせよ、ということだ。もっともその「仲間」(Gesellen)の質は問われるがね。

カントというと、ひとり黙々と思索にふける哲学者というお堅いイメージがあるが、実際は、社交術、つまり人と人とのつき合い方(Geselligkeit)も人間形成に必要不可欠な要素と考え、それを実践していた人でもあった。

そんなカント先生による社交術の極意をもう一つ挙げよう。
仲間との食事にはお酒はつきもの、しかしお酒が入るとハメをはずすもの。言わなくていいこと、言ってはいけないことをついつい口にしてしまう。まさに"Der Trunk loest die Zunge(飲酒は舌をなめらかにする)"である。

酒宴での言動は気をつけないといけない。分かってる。だけどやっぱり調子に乗ってべらべらしゃべってしまうんだな、これが。そして翌日、たっぷり後悔するハメになるのだ。
そこのところ、カントはよーく分かっていて、こう言っている。「酒宴で起こったことについてはお互い沈黙すべし。それが酒宴における暗黙の了解だ」。それを心得ていない者は賢者にあらず、それどころか興醒めな奴。

そしてもう一つ。「その日の愚行は忘れなければならない、次の日の愚行のために場所をあけておかなくてはならないから」。
至言である。酒の席のみならず、毎日が愚行の連続でしかない凡人にとってはありがたき言葉である。

 

(2014年12月16日(火) 13:37)

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