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『絆贈橋』(『葉錦』~マスターはアンドロイド ショートエピソード6~)

皆さん

きんようございます

◎今回のワンポイント

人の耳が聞くことが出来る音の振動数は

20~20,000Hz

会話の振動数は

500~2,000Hz

~コーヒーブレイク~

『葉錦』~マスターはアンドロイド~
(ショートエピソード6)

「どうしよう」

カウンターでため息を付くロリン・マーフィ

「ロリンさんは優しいですからね」

狩野リサもちょっと困っている

お母さんに プレゼントを贈る

そう決めてから

前もって

それとなく 母にリクエストを

聞いていたロリン

(ラジオがいいね ロリン あんまり高価なものは受け取らないよ)

(高価ってどれぐらい?)

(20円)

(何にも買えないよぉ 2,000円ううん 20,000円超えないので)

(そうかい きっとだよ 無理しても お母さん嬉しくないからね)

「ロリンさん それで そのラジオはいくら位なんです?」

マスターが聞く

「わかりません でも20,000円を超えるのは時間の問題」

「超える?」

「オークションなんです」

狩野とマスターは揃って言った

「値段上がっていくんですね」

「ええ、たぶん」「入札はまだ入っていないですが」

別の物にしたらどうかと 狩野か聞くと

「アンティーク ビンテージ物で希少な型なんだけど」

「年代物?」

「そう 昔 父が気に入って聞いていた物と同じ型」

「アラン氏の形見ですか」

「はい そのラジオを母は時々手に取って」

「聴いている?」

「いいえ 壊れてしまっていて音は出ません」

「それでも お母さんは」

「毎日スイッチを入れたり 思い出に浸ったりします」

雰囲気と違うジャズが流れていたことにふと気付く

うなりながら マスターが店のBGMを変えに行く

カウンターには 少し離れて

ロリンと狩野のほかに

もう一人  女が静かに 座っている

女のグラスに目を配ってから

マスターが戻ってきて ロリンに言う

「内緒で金額上げて入札しちゃえば」

「決済記録から知れちゃいます」

「そっか」

「母は喜ばないでしょう」

そのラジオは レアブリッジ

という 短波付 受信機

ロリンの父はイギリスで

日本からの国際放送を聴いていた

「明日秋葉原辺りで何か選んで帰ります」

ロリンは吹っ切ったように言うと

「ロリンさん 今日は2,000円分サービスしますね」

とせめてもの 言葉で マスターが応えた

「マスター 私は?」狩野が乗る

マスターは無言で カクテルを作り始めた

トリニダード・スコーピオン・ブッチ・テイラー

の匂いがし 狩野に出された

「はい 紅の豪照」

「出たー でもいただきます イカと水も」

みるみる紅潮する狩野の顔を

遠くから 見ていた女が

立ち上がって こちらに

近づいてきた

「レアブリッジお好きなんですか」

「ごほぇっ ごほぇっ ?」

「さっきお話し 聞こえてきたの」

狩野は咳き込みながら 

ロリンの方に手のひらを向けた

「良かったらその画面見せてくれます?」

ロリンがオークションページを開いて示した

女は 何箇所か確認すると

ロリンに言った

「ほとんどオークションに出ないでしょ このラジオ」

「え?」

詳しいのか

「私はロリンさんの放送いつも聴いてます」

リスナーか

「有難うございます」

「私 クリスティンといいます」

「クリスティンさんですね」

クリスティンと名乗る女は

ゆっくりとした口調で

「ロリンさん」

「はい」

「その入札は無用よ」

「どういうことですか」

水をさすのか

女はそれには答えず

「それから」

「はい」

「秋葉原のプレゼント選びもやめて」

「それでは・・ 母へのプレゼントは」

「とにかく」「買わないでください」

そういうと 女は 会計を済ませ

店を出て行った

「ロリンさんのファンみたいですね」

「そうみたい」

「けど お母さんのプレゼント選び止めてって?」

あの女の人 ずいぶんと真剣な顔だった

「何も買わないでおこうかな」

「いいんですか 贈り物 無くても」

「うちの母 むしろ好きじゃないから」

「え?」

「モノが増えるの」

そう言うと

ロリンは いつものように

天使への情熱を おかわりした

「狩野ちゃんは 雨窓の弾光?」

「ごほぇっ 紅・・」

「大丈夫?」

「負けるもんか」

赤い小悪魔に水を運ぶマスター

その近くで 携帯をしまいかけたロリンが

思わず 声を上げた

「あっ!」

狩野 とマスターがロリンを見る

「どうしました?」

ロリンは ボソっと 呟いた

「無くなってる・・」

「え?」

「レアブリッジのオークション出品が」

「消えちゃったの?・・」

店にかかる音楽は

ロリンを 癒したがっているように

流れていた

「そろそろ帰ろうか」

「帰りましょう」

ロリンと狩野が席をたつ

「マスター私にも2000円サービスしてよ」

「またいつかね」

「いつかほどあてにならないものないよ」

「忘れてなかったら」

「覚えててよ」

ドアを開けるマスター

「狩野ちゃん」

「うん?」

「左側はペットボトルのかごだよ」

ちょっと 上を見て狩野は

「覚えてなぁ~い」「じゃまたね」

「またのお越しを」

その週末

2,000円分の食材を使って

ロリン は 台所で 

母親とる

食事 カレーを作っていた

「お肉は上等」「寝かせてから 明日の方が美味しいからね」

部屋では ロリンの母が

かつては 鳴っていたラジオ

レアブリッジ を前に置いて

お茶を 飲んでいる

そこへ

ロリン宛に包みが届いた

開けてみると

直筆のカードが添えられている

(ロリンさんへ

時々あなたが 

立ち寄られるお店の噂

を聞いて

お店で待って居たら はたして

ロリンさんたちが入ってきました

あの日

店内で ネットでラジオを探す

あなたを 拝見してました

そこで

レアブリッジを携帯から出品しました

あなたは 目を止めてましたね

アランはレアブリッジで

よく日本の放送を

聴いていました

私は

あなたのお父様が経営してました

デザイン会社の

デザイナーです

アランマーフィ氏には

大変お世話になりました

レアブリッジのフォルム は

工業デザイナーでもある

アランと私のコラボ作品

出品したのは

ロンドンにあるアランの会社にあった

デッドストックです

お父様に出来なかったお礼と

素敵な放送をくださるあなた

と お母さまへ

クリスティン・エインズワースより)

エインズワース・・

世界的に有名なイギリスのブランド

あの女性が

ロリンは丁寧に

梱包をほどく

「これは」

ほとんど 傷のない

レアブリッジが現れる

「ロリン 何か届いたのかいー」

離れた場所から 母の声

「あ、うんー 別にー 知り合いの女の人から―」

ややかみ合わない 生返事を返してから

まだしばらくは 信じられない

という表情で

ロリンはじんわり呟いた

あそこにあるものと

差し替えは 母が寝静まってから

土曜日の今夜 

決行しよう

「ラジオも上等」「寝かせてから 明日の方がオイシイからね」

五月の日曜日

初めて喋る

愛機が

ここにある

[エンディングテーマ サイモン&ガーファンクル/明日に架ける橋]
このブログの後半はフィクションです

 

(2016年5月6日(金) 15:54)

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この記事を書いたコーチ

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